ジャック・ケッチャム「オンリー・チャイルド」☆感想

ケッチャムの小説を読むのはこれで三冊目だ。
隣の家の少女」、「オフシーズン」……読んだ人ならばわかるだろうが、苦手な人が間違って読んでしまったら寝込むこと間違いない。
この「オンリー・チャイルド」を読んで理解した。残酷で陰惨で救いのない物語を量産し続ける、それがジャック・ケッチャムという作家なのだ。

あらすじ
リディアは妹の結婚式で、金持ちでキュートなアーサーと出会った。馬の合った2人は結婚して息子のロバートをもうける。一見、幸せな家庭生活のように思えたが、徐々にアーサーがその本性を現しだす。その魔の手が息子ロバートに及んだとき、家庭生活は完全に崩壊したのだった……

ありがちな話にみえるが、特筆すべきはリアリティーだと思われる。
後半はロバートに性的虐待を行ったアーサーの裁判がおこなわれるのだが、アーサーの弁護士が狡猾なやつで裁判は全然リディアの思うように進まない。
読者視点で、明らかに犯罪者であるアーサーを追い詰めることができないのである。これは読者としても大変にもどかしい。
実際の裁判もこんな感じなのかなあと思うとげんなりする。

このアーサーというキャラクターは幼少時に虐待を受け悪ガキに成長、順調に変態サディストとなりました、というような典型的アメリカ殺人鬼キャラだ。
小説内で断言はされていないが、殺人も犯しているとおもわれる。
そんな危ない男アーサーだが、妻のアナルを犯したり、息子のアナルを犯したり……
ケツ穴掘り夫のイメージがあまりに強い。
最低の変態糞男である。
しかしこういう奴に限って美人と結婚したりしている。なぜだ。
美女よ、見る目を磨け。

脱線したが、ラストではいろいろあってアーサーが死に、リディアが刑務所にぶち込まれることになる。一方的に被害者であり続けた一人息子ロバートは、アーサーを虐待して、「作り上げてしまった」祖母に引き取られることになる……
……救いはどこにあるんですかー!?
登場する人物たち、一人たりとも救われなかった。
ケッチャムの、この意地でも登場人物を救ってやるものかという意志はどこからくるのだろう。
陰惨さでは「隣の家の少女」に及ばない。残酷さでは「オフシーズン」に及ばない。
しかしまちがいなくこの小説、「オンリー・チャイルド」は恐ろしい小説だ。
興味を持ったらぜひここで挙げた三冊を読んでいただきたい。なるべく精神が明るいときに……

隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)

隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)