村上龍「昭和歌謡大全集」☆感想
最初に言わせてもらうと、これは昭和歌謡の大全集ではない。
若者とおばさんとの壮絶な戦争小説だ!!
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2001/06
- メディア: 文庫
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とくに理由もなく集まり、毎夜毎夜カラオケ大会や向かいのアパートのすごくスタイルのいい女のシャワーなどを眺める若者たち。
ある日彼らの一人スギオカが名も知らぬおばさんを刺し殺す。そのおばさんは名前が一緒の女たちが集まった『ミドリ会』というグループの一人だった。おばさんたちは仲間を殺されたことに激怒し、包丁を取り付けたモップを、道路で立ち小便をしていたスギオカの首に突き刺しに復讐を果たす。
そこから二つのグループの、血で血を洗う復讐という名の聖戦の幕が切って落とされた・・・
とカッコつけてあらすじを書いてみたが、どちらもホントに、どうしようもない人間たちの集まりだ。
若者たちは狂ってるし、おばさんたちはどこまで行ってもおばさんだ。
昭和の名曲をBGMに、正義は我にありと若者たちはトカレフを、おばさんたちはロケットランチャーを、憎き相手にぶっ放す。
田舎の金物店でトカレフを11万円で購入する、自衛隊員からアメリカ軍のロケットランチャーを譲り受けるなど、現実味のない出来事が多いがそれを受け入れることができればこの小説はおおいにあなたをスカッとさせてくれるだろう。オチに関してはかなり意見が分かれるところだろうが。
なんにしても全編通してエネルギーが溢れている小説だった。
自分が気に入ったのは直接戦いには参加しない、スギオカ殺害の瞬間を目撃した女子短大生だ。とにかく他の人物が彼女に対して抱く感想がひどい!!「その女子短大生の顔と声が常軌を逸していたのだが」、とか「その女子短大生がまともな口調でまともな日本語をしゃべると異様だった。わけのわからない言葉を喋ってくれるといいな」とか!正直どんな奴なんだよと吹き出してしまった。幽霊と話したりするシーンもあるし、圧倒的に異彩を放つキャラだ。直接ストーリーには絡んでこないのにこの存在感・・・自分もこんな脇役を描きたいと思った。
「よく言うだろう、人類が滅んだ後に残るのはゴキブリだって、それは違う、おばさんだ。」
−ノガミ金物店 店主
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2004/05/28
- メディア: DVD
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衝動殺人から始まってしまった若者とおばさんの殺し合い・・・この戦いの果てに光は差すのか?
結末を見届けよ!(映画化もされていますがいろいろと違いがあるので注意。自分は小説のほうが好きです。)